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アート24:落合賢監督

今年の日米協会主催シネ祭りのオープニング作品「太秦ライムライト」の落合賢監督にアメリカ留学時代や「太秦」撮影についてお話を伺いました。

アメリカで学んだ事

監督がとってもお若いのでちょっとびっくりしています。監督は大学からアメリカだそうですね。

もともとハリウッドの映画が大好きだったので、いつかアメリカで映画の勉強がしたいとずっと思っていました。ニューヨーク大学、UCLA、それから南カリフォルニア大学(USC)のどれかに行きたいと思って高校卒業してすぐ受験したのですがどこも受からなくてとりあえずニューヨーク大学のサマースクールに行ったのです。

でもアメリカで感じたのは僕が中学高校でやってきた英語というのは箸にも棒にもかからないということでした。ほとんどしゃべれない状態でニューヨーク大学で過ごしていたのですけれど、そこで一番良かったのは自分一人の時間を持てた事だと思うのです。サマースクール中は大学の寮に誰もいない状態で天井にあるファンを見つめながら「何しにここに来たのだろう」とか「これから何をしたいのだろう」ということをずっと考えていたのです。そこから映画を作り続けたいという気持ちになりその後USCに入学しました。

USCといえばジョージ•ルーカスも通った名門校ですが、でもそれも10年ちょっと前の事なのですよね。それが今では松方弘樹さんや萬田久子さんを相手にメガホン取っちゃうのだから凄いです。大学院卒業後日本に戻って来た理由は?

大学院を出た後すぐハリウッドで映画を作りたいとは思っていたのですがハードルは高く、まず不可能に近いのです。そんな中アメリカで成功している日本のみならずヨーロッパやアジアの監督について調べていたら監督の9割以上がまずは自分の国で撮影して自分の国で成功してそこからアメリカに来ている場合が多いのです。例えばアン•リー監督はニューヨーク大学を出た後7年間くらい試行錯誤して台湾に戻り作品を撮りアメリカに帰って来ました。

そ、それそれ、実は落合監督ってアン•リー監督っぽいなあ、と思っていたのです。

いえいえ、そんなことはないのですが、それで僕自身も日本の制作会社100社くらいにロスから手紙を書いたのです。それも一番トップに書こうと思って社長あてに自分の卒業製作とDVDと新しい長編の脚本をすごい大きなパッケージで送ったのです。その中でセディックという会社の中沢社長にお会いして、そこからタイガーマスクの実写版を監督させて頂ける事になりました。

いきなり長編の撮影じゃないですか!日本からの留学生が減っている理由の一つに日本に帰ってからの就職難があげられますが、今のお話を聞いていると留学する勇気が出てきますね。

僕がアメリカの大学で学んだ一つの大きなことにクリエーターの最大の魅力というのは大学を出た後に職を探すのではなく職を作る事だという事があります。もうひとつはセルフプロデュース能力です。アメリカの大学と大学院では自分で資金を集めて卒業制作を作らなければならず、製作費用だいたい1000万円くらいを自分で集めます。自分をどうやってプロモーションしていくか、営業していくかを学びました。

「居場所探し」というテーマ

タイガーマスクの次の長編が今回の「太秦ライムライト」ですがハリウッド映画大好きのアメリカ帰りの監督が時代劇モチーフの映画を監督されるにあたって、ギャップはありましたか?

確かに僕も最初にお話を頂いた時は自分に出来るのかと悩む部分もあったのですが、ロスに製作と配給会社を持つプロデューサーのko miさんという方が僕を選んだ理由として海外に発信する作品にするために京都という東洋の題材を西洋の作り方で作りたいとおっしゃってくださいました。

「太秦」には文化や言葉を超えたところで共有できるものがあります。日本を知らなくても楽しめるのですよね。もしかしたら落合監督が今後のアメリカにおける日本映画のポジションを変えてくれるのじゃないかと感じたのですが。

そういって頂けるとすごく嬉しいです。映画というのは言葉のひとつ、コミュニケーションの一つだと僕は思っているので、その中には文法が存在しています。ハリウッド映画の文法は世界的に凄く親しまれている、それは英語みたいな感じですね。逆に日本語というのは世界では通じない部分が多いじゃないですか。だから映画の作り方として日本の題材をアメリカ映画の文法を使いつつやることで物語が観客特に海外のお客さんにすんなりと受け入れてもらえるのじゃないかと思います。

「5万回切られた男」福本さんは「太秦」で主演男優賞を受賞されましたね。

僕にとってこの映画というのは福本さん演じる香美山が自分の居場所である撮影所を追いやられてどこに行けば自分の居場所があるのだろう、とさまよう話でもあると思うのです。今まで僕の作品のテーマになっているのはこの居場所を探し続ける主人公の話なのです。

もしかしてNYUで天井を見つめていたあの夏から模索しているテーマだったりして。次作の忍者映画も楽しみにしております。今日はありがとうございました。