Go Asia Go
ゴーゴーアジア

アート25:オペラ歌手、田村麻子さん

今年4月にナショナルズ球場そしてケネディーセンターミレニアムステージにてその素晴らしい歌声で多くの人々を魅了したオペラ歌手、田村麻子さんに国際的歌手となるまでの道のりそしてアジア系オペラ歌手としてのチャレンジについてお話を伺いました。

紆余曲折の末つかんだプロの道
田村さんはもともと声楽志望ではなくピアニストを目指していたのだそうですね。

母が私を家の近所にある音楽教室に連れて行った時に凄く反応が良くて、「この子は才能がある」と思い込んだのかピアノの個人レッスンを始めたのです。4歳の時でした。母は大学で合唱をやっていた時に東京芸大の人達に憧れたみたいで「がんばって東京芸大に行きましょう」と私の頭に刷り込んでいたから私はその頃から「芸大で勉強しよう」と思っていたのです。

4 歳にしてすでに将来の目標があったなんて。

高校は東京芸大付属高校を受験しようと思って一生懸命がんばったのですが、ピアノの先生からは多分ダメだろうと言われていました。

えー、そんな夢を壊すような事を。

上手でも手が凄く小さくて連続8度と言われるような曲が全然弾けないのです。道具がないから無理なのにそれでも努力すれば出来るようになる気がして受験時代は毎日13時間ぐらい弾いていましたが結局入れませんでした。

まだ15歳の普通なら夢溢れる時期に大挫折しちゃった訳ですね。

人生には努力しても報われない事ってあるのだと。だけどその時期に母が今度は「実は歌のほうが向いていると小さい時から思っていた」と言い出したのです。

素晴らしい切り替えの早さ!

芸術的な歌があるということも知らなかったのですが、母が高校一年の時にミュージカルに連れて行ってくれてすっかりはまってしまいました。そしたら今度は母が「芸大に声楽科があるからそこに行けばいい」と言ったのです。歌に転向してからも明確な目的というのはなかったのですけどもある時ドニゼッティ作「ランメルモールのルチア」というオペラをテレビで見ていたらあまりに感動して「私の道だ」と思ったのです。

それで国立音大の声楽科に行ったのですがずっとピアノが好きで人の伴奏をしてあげるとみんな私の伴奏だとよく歌えると言ってくれるから、もし歌でものにならなかったらコレペティートル(オペラ歌手のコーチ)になろうかな、と思っていました。でもある時凄くいい演奏をして沢山の拍手を貰った時にみんな歌い手に拍手をしているのをみて面白くなかったのです。やっぱり真ん中に立って歌って拍手をして貰えるほうがいいなと思ってそれから頑張って国立音大でも賞をもらったりしました。

そんな努力が実ってプラシド•ドミンゴが開催している有名なオペラコンクール、オペラリアの決勝まで進まれましたね。

ファイナルに残った26歳の私は最年少で日本人もたった一人で賞は取れなかったけど、ドミンゴさんが「君はダイヤモンドの原石だから」とおっしゃってくださいました。

人種の壁
その後は海外でどんどん役を掴んで行かれましたがオーディションでの苦労話などありますか?

コンクールはオリンピックと一緒で良い演技をしたり点数が取れる技をすれば賞が取れるのですが、オーディションは例えば「あまり背が高くないから」なんていう事で結果が出ます。ある時ニューヨークでとても難しいアリアを歌い終わった時審査員がみんな立ち上がって拍手して「一番素晴らしかった、ありがとう」と言ってくれたのに「今回は東洋人という設定はありえない」と言われた事があったのです。悔しくて泣きながら家に帰って「役が取れないならやっても意味がない、国際的というのはやっぱり無理なのかな」、と思った事がありました。

アジア人がオペラで舞台に立つにはハンディがあると?

オペラは西洋の伝統芸能だから、例えば日本の歌舞伎に西洋人が入って来て日本語や所作をきちっとやって主役を張るということの反対を私たちはやらなくてはいけないのです。

アジア人の役と言えばマダムバタフライがありますが、この役は如何ですか?

アメリカに来た当時はすぐにみんな「マダムバタフライがある」と言うのです。でもオペラには作曲家が作曲する段階で想定した声の色というものがあります。だから私はその度に「日本人だから誰でも歌えるという訳じゃない。プッチーニはドラマチックな声を想定して書いたのだから、私が歌ったらプッチーニ様を冒涜する事になる」と思っていました。だけどそれは芸術的には正しい考え方なのですが、商業的には日本人が蝶々夫人をやるとなると、「じゃあ聞きたい」となるのです。それで30代後半の時に「そこまで真面目に考えなくてもいいかな」とロールデビューしたら役としては素晴らしいし充実感を与えてくれる役だからオファーが来る分には良いじゃないかと思っています。

一番好きな役は?

最初にオペラをテレビで見て衝撃を受けた「ランメルモールのルチア」のルチアが私の中のドリームロールです。

これからも素敵な歌声を聞かせてくださいね。今日はありがとうございました。

www.asakotamura.com