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アート26:加治屋百合子さん

アメリカンバレエシアター(ABT)から昨年ヒューストンバレエ団に移籍したプリンシパルダンサー加治屋百合子さんに、子供の頃のことそして今シーズンの見所などについてお話を伺いました。

ダンサーでもあり女優でもありたい

ヒューストンバレエ団移籍後一年が経っていかがでしょうか?

ABTに13年間いて、自分のレベルアップの為にはチェンジが必要かなと思い移籍してからの一年を振り返ると、新しい役に挑戦したり違うことにチャレンジした事で自分の成長が感じらます。

ヒューストンバレエ団の舞台監督スタントン•ウェルチさんと働くのはどんな感じですか?

実は17歳でABTに入団した最初の日のリハーサルのスケジュールは今でも取ってあるのですけど、スケジュールはスタントンさんの新作から始まっていたのです。ですから昔から知っていました。

加治屋さんが大きく成長された姿をご覧になって、スタントンさんも感慨ひとしおなのではないでしょうか。いつか踊ってみたい役はありますか?

(今シーズンオープニングの)マノンは踊ってみたかった役のひとつなので踊れる事が凄く楽しみです。ドラマチックバレエのひとつでマノンは凄く演技力が要求される作品なのです。

そう、その演技力についてぜひお話をお聞かせください。加治屋さんの卓越した表現力の秘密は何でしょうか?

自分はダンサーでもあり女優でもありたいと思っているので、舞台の上で踊りが綺麗でステップが成り立っていてで終わるのではなく、やはり見ているお客さまの心を動かせるダンサーになりたいと思っています。中国でのトレーニングというのはバレエ学校の生徒も最初の2年間は中国の民族舞踊を習わないといけないカリキュラムになっています。中国民族舞踊というのは表現力がものすごく豊かなので、それを小さい頃にやっていたから表現するという事を身につけたのではないかと思います。

今中国の話が出ましたが、10歳でお父様の転勤でいかれた中国でご両親がご帰国後もお一人で上海に残って全寮制の舞踊学校に行く事に決めたのですよね。

子供というのは10歳ながらに自分は大人だと思っている所があって自分が小さいというのが分からないのです。今は自分が大人になって講習会などで小さい子供たちを教える事が多いのですが、そういう時に10歳の子供もがいると「自分はこんなに小さかったのだ」、とびっくりします。

外から見るとまるでバレリーナを目指して留学したように見えるのですが、バレリーナになりたいという気持ちは全くなく、両親も人生経験を得ると言うかいろんなカルチャーに触れる事は凄く良い事だと思っていたので一か月留学して戻ってくればいい、とそのくらいの気持ちだったのです。

日本人であって良かったと思う

それが世界的に有名なバレリーナになるまで続いているのだから凄い!

両親が娘を留学させたいとお願いした時に上海舞踊学校から「3ヶ月ももたないから、そんな幼い子供を海外留学させなくてもいいんじゃないか」と反対に辞めた方がいいということを言われたそうです。でも両親が「娘にチャレンジさせたい」と学校を説得して留学の許可を得ました。中国はアメリカと一緒で9月入学ですが、一ヶ月たった頃にある日学校のドアを開けたら母の姿があったのです。「もういいよ、帰ろう」って航空券を手に。でも私は残りたいと言いました。母は結局一人で帰ったのですが、その時は凄く寂しかったと大人になってから言っていました。子供ながらに一回入学して始めた事を他の自分と同じ年代の子供たちが頑張っている中、自分一人が途中放棄するのが凄く嫌だったのです。

力ずくで連れ帰らなかったお母さんは偉い!でもそんなに小さい時から日本を離れ中国、カナダ、アメリカと世界中で生きて来てアイデンティティーの問題などなかったのでしょうか?

ありました。上海にいた時は国の学校だったので先生も生徒も選ばれた人ばかりで、留学生として両親がお金を払って入学した私は最初の何年間かは見ても貰えませんでした。だから中国人の生徒と同じ扱いを受けたくて中国人になりたいと思っていたのです。でもABT入団のためにアメリカに来て「何処から来たの?」と聞かれて上海舞踊学校から来ただけじゃないなと思い、そして私は日本人ですと言うようになって初めて自分が日本人なのだと実感しました。ABTのみんなは日本が大好きで特に日本ツアーを楽しみにしていて、そこで初めて自分は日本人で良かった、そして日本人でいる事が好きになったのです。

今シーズンの見所を教えて頂けますか?

今シーズンはマノンから始まってスタントンさんの作品があってジゼルに終わります。ジゼルは以前も踊った事がありますが、今年はスタントンさんの新作で自分の中でまた新しいジゼルが見つかるのではないかという事と、またスタントンさんと一緒に仕事が出来るというのが楽しみです。

それから30年近く上演された前芸術監督ベン•スティーブンさん振り付けのクルミ割り人形が今年で最後となります。

それは是非見に行かないと。新しいヒューストンバレエ団の顔、加治屋さんの舞台を今シーズンも楽しみにしています。ありがとうございました。

Houston Ballet