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教育7:大谷浩二先生

全米でもトップレベルを誇る公立校トーマスジェファーソン高校(以下TJ)で日本語を教える大谷浩二先生にアメリカでの日本語教育についてお話を伺いました。

安定供給という構図

TJは1985年創立ですが、日本語の授業はその当時からあったのでしょうか。

開校当時からあって今で30年近くになります。

大谷先生は9年前にTJにいらしたとの事ですが、最近では日本語教育の打ち切りを決めた学校の話をよく耳にします。TJではいかがですか?

私が来た当初よりはかなり減っています。先任の藤田先生の時で一番多かったのは125人でした。でも私が2006年に来た時は100名ちょっとでそれからなだらかに減って来ていて今60人です。

全校生徒1800人中60人ですからかなりのマイノリティーですね。減少の理由をどうお考えですか?

TJに関して言えばここは数学とサイエンスがフラッグシップの学校ですから、理系はかなりレベルが高くて大学レベルの勉強までします。だから中学で勉強していた時のギアをいきなりハイにしないと4年生の時に大学1、2年レベルの授業が出来ません。研究施設にしても大学レベルのものを持っています。そういう状況にあってせっかく中学からやってきた外国語を捨てて新しい言語に挑戦しようという気にはなれない、という事があるかもしれません。それに普通は余程中学でその教科と合わなかった等の理由がない限り高校で別の言語は選びません。

だから中学校であまり教えていない言語、ロシア語とかドイツ語、日本語は必然的に高校で選択する生徒は少なくなります。いわば安定供給がない状況なのです。

日本語を絶やさない用にするには、高校からではなく中学から日本語を選択出来るようにするというのが鍵という事でしょうか。

フェアファックス郡では小学校から外国語教育を始めようというFLES(Foreign Language in the Elementary School ) プログラムがあります。郡全部入れると小学校が120校近くありますがまだ半分以上の学校でFLESを取り入れていません。これから5年計画で郡全ての小学校にフレスを導入しようという動きがあります。

それらの小学校に日本語を入れて頂けるとそれが中学での日本語選択という安定供給につながり、そして高校でも選択するという確固たる構図が生まれますね。

それにはまずFLESが入っていない小学校で何語を教えようかとなった時に保護者会を開きます。そこで「日本語!」と押す人が必要になります。

そこに誰も日本人が住んでいないと手を挙げる人がいなくなっちゃう。

そのような中でどのように日本語をアピールしていくか。親御さんたちが毎日の生活のなかでどれだけ日本語、日本文化、日本というものを目にするかが大切です。昔は車や電子機器は全部日本製で、子供はポケモンで遊んでいるとか、日本の物があらゆる所にあったから自然と「日本はいいなあ」という感じになりました。でも今は国際情勢、政治にしてもちょっと違います。こういった事は言語選択にも陰を落とします。

日本語を学ぶ実質的ベネフィット

TJの日本語教室の生徒さんは皆さんアメリカ人ですか?

ほとんどそうです。

アメリカ人の生徒さんが日本語を学ぶ理由は?

ポップカルチャー系で入ってくる人が大半で大学でもそうだと聞きます。それ以外には自分のカルチュラルバックグラウンドが日本に関係しているのでそれで日本語を学びたいという生徒でしょうか。この学校は理系ですから日本のロボット産業がいいとか、コンピューターテクノロジーが進んでいるとか、そういう事に興味を持って日本語を選択する生徒もいます。

日本語を学ぶ人がこれだけマイノリティーになってくると大学受験では目立ってかえって有利だったりして?

大学生が日本語を選択する理由で大学院やメディカルスクールに行きたい人が他の人と同じような事をしていては目立たないから、誰もやっていない日本語を選ぶ人がいると聞いた事があります。

やっぱり!

でも頭では分かっていても(日本語は難しいというイメージがあるので)高校で日本語を取る事によってGPAが下がったら大学受験が大変だと思う生徒もいます。何を勉強したいとかよりも、いかにして高いGPAを確保するかということが非常に大切なのでしょうね。

まずは数字ありきの大学受験。

教育の悪い所です。

そんな中これから日本語を学ぶという事をもっと魅力的にして行くために出来る事は何でしょうか。

「なぜ日本語を勉強したら将来の役に立つか」という事を売りにして行かないといけません。就職活動する時にアメリカ人で日本語も出来るという人は少ないので、そういう中にいると浮き立ちます。

日本企業もそういう人をどんどん採用して日本語を学ぶと受験や就職で有利である、となるとポップカルチャー人気にかげりが訪れても実質的ベネフィットで日本語復活が望めるかもしれませんね。現場の声をありがとうございました。